ゲインとフェーダー
さて、前回Part1では導入として、「録音レベルの重要性」について話しましたが、今回は「最適な録音レベルでレコーディングするにはどうしたらよいか」を説明して行きたいと思います。
§ゲインとフェーダー§
以前、サウンド&レコーディングマガジン紙のQ&Aコーナーで「ゲインとフェーダーどちらもレベルが上がるけど、どう違うんですか?」という質問に答えたことがありました。
ごく一般的なミキサー卓でいう“ゲインツマミ”はミキサーの入り口で音源の入力レベルを調整するところになります。それに対して“フェーダー”は、ゲインで得たレベルをどのくらいの音量で「アウトプット」するのかを設定をするところ。つまり、“ゲインはインプット、フェーダーはアウトプットのレベルを調整するもの”と考えて下さい。
まずは音の流れとして簡易なミキサーを思い浮かべて下さい。(図1参照)マイクやライン音源などのケーブルをミキサーにつなぎ録音レベルを決める場合、一番始めに音が通るところはゲインになります。この時、アウトプットのレベル調整をする為のフェーダーはゼロデシベルの位置にしておくのが基本。(あくまで録音時の場合)
ちょっとややこしいかもしれないのですが、後ろにあるフェーダーを先にゼロデシベルに固定した状態で“最適な録音レベル”となるよう調整しなければならないのが“ゲイン”ということになるのです。
図2を見て下さい。(前提として、同じ音源で出力したレコーダー側のレベルが3例ともちょうどよく振れているとします。)
図2
[2-1] はゲインが絞りきりでレベルが小さかった為にフェーダーでレベルを稼いだ図。ちょうどいいレベルで録音できたとしても、機材によってはフェーダーのノイズが増える(※注1)可能性があることや、ゲインの本体である“オペアンプ”の性能を最大限に使うことができず、とてもいい状態とは言えません。
[2-2] これはフェーダー位置が0dBのところにあって、ゲインでレベル合わせを行った図。ゲイン、フェーダーの性能をベストの状態で使えている理想的な形。
[2-3] ゲインでレベルを上げ過ぎてしまったため、フェーダーを下げて録音レベル調整を行った図。これではゲインのところで歪んでしまう危険性やノイズが大きくなる可能性があるためあまりお勧めできません。
※注1:ゲインやフェーダーなどに使われるオペアンプはレベルを上げるほど「サー」というノイズが増えていきます。このノイズが音源に混ざって出力されるため、正しいゲイン、フェーダーの使い方が求められる訳です。
このようにひとつひとつの音源をベストの状態でレコーディングできるよう心がけましょう。
ゲイン、フェーダーそれぞれのオペアンプの性能を最大限に活かしてレコーディングすることが、いい仕上がりに直結していくのだということを理解してもらえたらと思います。
[補足] フェーダーには回転式の“ロータリーフェーダー”とスライド式の“リニアフェーダー”とがあります。今回の説明でのゲインツマミは回転式のロータリーフェーダー型ですが、入力のゲインツマミはレコーディングの現場では「フェーダー」と呼びません。基本的にはリニア式のボリュームコントローラーと覚えて下さい。
2013年9月28日