「え?!みんなWavesなの?!」
に:お二人にお聞きしたいのですが、よく使われるプラグインのエフェクトってありますか?よくボカロPだと、WavesのSilver、Gold、Platinumとかを買う人が多いんですが。
40:僕は典型ですね。良く使うリバーブは R-verb。ディレイも確かHDelay。
に:Wavesのバンドルですね。
40:コンプとかもR-Compがメインになってますし、Wavesさまさまですね。
に:使ってる人、非常に多いですよね。
せ:プロのエンジニアであり、ボカロPでもある、飛澤さん=寂恋 は何を使っているのですか?
飛:僕もWavesです。
(一同爆笑)
飛:本当に、Wavesないと仕事できないくらいです。イコライザーもほとんどルネッサンスEQだし、Q10も使う。歌とか、「がっつり」かける時はルネッサンスAxxとコンプのC1を大体二段がけする。コンプは潰れ方の差で、Axx・フェアチャイルド・1176と使い分けます。EQは、多少カーブとか質で違いが欲しい時はソノックスを使ったりもするけど、デフォルトほとんどルネッサンスEQですね。僕らはデッカイ卓の、SSLだったらこういうカーブ、ニーブだったらこういうカーブ、って言う感覚が入ってる。ルネッサンスEQは、カーブの感覚がニーブっぽいし、ソノックスはどちらかと言えばSSLに近い感じですね。
に:プロを目指している人ですと、「とりあえずこれを買っておけ」っていうのはありますか? ちなみにWavesだと・・・
飛: Goldで十分、Platinumもってたら万々歳でしょう。
40:僕もGoldです。
に:実は私もGoldなんです。
飛:ふつうそれだけあれば十分。
せ:むしろどう使うか、って言う話ですよね。機材はもう、プロとの間に差はないから。
飛:だってふつうにミックスダウンするのに、EQとコンプとリバーブとディレイがあったら、ほぼ何でも出来ますからね。
に:道具の話って、結構みんな好きじゃないですか。「この人もこれを使っているんだ」っていうのは、ギター少年が憧れのギタリストと同じ道具を使いたくなるような感じですね。
アナログの音、デジタルの音
飛:あと、僕はアナログ系のシミュレーターは多用します。普段はプロトゥールスを使っているんですが、凄く音が綺麗なんですよ。アナログ卓って言うのは、中の素子を通ることによって若干倍音が足されるんですよ。その感じが体に染みついてるから、デジタルを聴いてると、どうしてももっとズ太くしたくなる。アナログシミュレーターを一個挟むと、感じが近くなる。
40:例えばどんなものがあるんでしょう?
飛:例えばDUYのアナログバンドル。チューブ(真空管)系の奴を挟むとグッと太くなる。
(一同、スマホでメモを取り始める)
飛:プロトゥールスだったらHEAT。これをインストールすると、ミキサー自体がアナログ卓に変身して倍音成分をチャンネル一本一本に足せるんですよ。それも、テープ的にするのかチューブ的にするのか選べて、だいぶアナログの卓に近くなる。これを必ずミックスダウン時には付加して、音を太くしています。
せ:非常に興味深いですね。僕自身もマスタリングをやるので今のお話は自分なりにわかる積りなのですが、40mPもにとってもにいとPにとっても、アナログのお話や、「太い」という感覚が、凄く新鮮に響いてるような気がするのですが。
40:はい、むしろデジタルしか聴いたことないので・・・CDでアナログを通った音も聴いているんでしょうけど、その違いがわからないですね。
飛:デジタルしか聴いてない人には、「アナログはこういうものだ」というのがわからない。逆にアナログばっかりの人は、デジタルの良いところを使えていないと思うんです。一回アナログの感じを聴いてみる機会があるといいんですけどね。もし今度大きなレコーディングスタジオに行ったら、エンジニアに「アナログレコーダーで録らせて貰えませんか?」って言ってみたら?
40:アナログレコーダー、ってつまり回るテープの・・・
飛:そうそう、テープレコーダー。2インチの幅の、大きいオープンリールのテープで録るんですよ。そこに24チャネル入る。「年に二回くらいしか使いません」みたいなスタジオばっかりだから。僕も何年録ってないんだろう・・・今度やりません?
40:パンチインとかできないんですよね?
飛:できますよ、もちろん!でもUNDOはできない。録って、(ボタンを)押したら(元のトラックの音は)消える。上書きになっちゃう。
40:「あ、やっぱり使いたかった」っていうのはできないんですね。緊張感ありますね
飛:僕らはそういうレコーディングをやってきた。
「いい音」を聴く機会を増やしたい
飛:リズム隊とかはアナログレコーダーで録ると全然違うよ。
40:本当ですか?
飛:テープコンプっていうのがかかって、すごくこなれたいい音になるんですよ。アナログで録った時の心地いい感覚が体に残ってるから、「あの音にしたい!」っていつも思いながらやってます。
せ:先ほど体験する機会が少ないっておっしゃいましたけど・・・
飛:何か企画しましょうかね?アナログを体験する・・・
せ:本日は一連の企画の第一回目と言う位置づけで、メインゲストとして40mPをお呼びしている訳ですけれども、何回目かであってもいいかもしれませんね。
40:普通に興味本位で見てみたいです。みたことないので。
に:基本的にはデジタルの音しか聴いたことないので、温かみとか、凄く気になります。
飛:ちょっと考えます。っていうか、これ読んで協力してくれそな人いらっしゃいましたらご連絡下さい!・・・(笑)。今の若いミュージシャンは、「いい音」を知らない人が多いと感じますね。「いい音ってなんですか」って聞くと、みんな答えに詰まっちゃう。プロでも、「ふだん何でモニターしてるの?」って言うと、iPodとイヤホン。これじゃ何を基準に自分の音作るの?ギタリストだって、マーシャルを買おうとかJCMにしようとか、基準がなければ選べないじゃない?「誰々がつかっているから」だけだと、どんどん他人の真似だけになっちゃう。だから、「いい音ってなんだろう」っていう基準を自分の中で作って欲しいなと、まず思います。
「飛澤正人x40mP・にいとP企画、サウンドデザイナー誌にて始動!」
せ:飛澤さんが以前仰っていたことで、非常に印象的だったのは、とにかく「仕掛けようよ」と。何か動いてみなきゃ始まらないし、動けば何かが返ってくるから、っていうのがあります。
に:せっかくお知り合いになれましたので、なにかできたらいいですね。
飛:一曲ずつ、僕がMIXするから、曲持ってきてよ。まずコラボレーションして、40mPx飛澤正人、にいとPx飛澤正人、で、何か作るってのは面白いよね。
40:ホントですか?
に:おぉー!
飛:そういうところから、「もっと音に意識を持とうぜ」みたいなことをメッセージして行きたいですね。
対談日時 2014年3月28日
Flash Link Studio にて
撮影:小澤克之