投稿数が多過ぎて・・・
飛:今日は最初のころの話とかも聞けたし、楽しかったです。自分も去年初めてあげたばっかりで・・・何と言うか、あげた瞬間にどんどん埋もれていくじゃない?
せ:投稿数が物凄いですからね。
40:新しい人が、逆に出てきにくい界隈になっているのは、ちょっと「マズイな」っていう感じがありますね:新作をずっと追いかけている訳ではないので、あまり確かなことは分からないですけれど、実感としてここ数年、あまり新しい人が出てきてないな、って言うのは感じますね、ずっと同じ人ばかりがランキングを独占している。
せ:ニコニコ動画でも近年ミリオンが出にくくなっているそうです。
40:再生数が全体的に少なくなっているんですかね。
せ:いや全体ではむしろ増えてて、曲が多いので、一曲一曲の再生数の平均が減っているみたいです。
飛:散らばっちゃった、ってことなんだろうね。
に:ひと昔前は、ニコニコ動画のランキングって・・・毎時100位まではランキングで見れるんですけれども、あれの100位までの間に、ボカロ曲が30曲くらいありましたよね?でも、今はないですよね。
40:そうだ!今は実況とか・・・
に:公式のアニメが多いのと、あとゲーム実況。
「仕掛け」が必要な時代
飛:ボカロの新作とかもっと盛り上げていく環境って言うのを・・・何かを仕掛けないとダメだと思うんだよね。
に:ピックアップする仕組みがないなって言うのは感じています。
飛:今のボカロ「業界」の中を見てると、そういう意味でも、普通の音楽業界でやってることに近くなってきた・・・通常音楽業界では(戦略的に)「こういう仕掛けをして、こういう宣伝をしてやりましょう」と言うことをしっかりやらないと、なかなか売れるものではないんですよ。「売る」のと「再生数を上げる」という差はありますけど、ボカロ界でも、ニコ動内でも、そういう仕掛けが必要になってきちゃったんじゃないかなと思うんです。
40:ネット上の古い考え方かもしれないですけれども、あまり宣伝し過ぎるのが、「カッコ悪い」みたいな風潮ってあって。がつがつしているのが美しくない、みたいな考え方がけっこうあるんですね。自分もそういうのを気にしちゃうタイプなのかもしれないんですけれども。その辺もちょっと壁になっているのかもしれないです。
「キュレーション」の時代
せ:いまは、例えば2ちゃんがソースのことでも、2ちゃんのVIP板まで読みに行く人はあまりいなくって、記事を集めた、ちょっと前のハム速とかニュー速とか、一般的な情報だとロケットニュースとか、らばQとか、NAVERまとめとか、面白いものを集めて話題にしている、キュレーションメディアと言われるサイトが一番よくみられていて、そこに載るとそれがシェアされたりリツイートされて拡がって行くと言う、そういう構造になってます。ボーカロイドの世界でもそれに近い構造が必要なのかもしれないですね。参加者も曲数も増えた結果、一定の閾値を越えて、多くの人には追い切れなくなっているのかもしれません。
に:確かに、キュレーションメディアみたいな、ピックアップする何かが必要ですよね。新作・良作を。
飛:個人でやっている人はいますけど、限界がある。広まるのがその人の友達だけになっちゃうんだよね。
40:取り上げかたを、今までと同じような感じにするのか、ちょっと新しくするのかで結構変わって来るような気がします。あと、本当にコテコテの「オタク臭」全開な感じでとりあげるのか、音楽としてカッコよく紹介するのか、が結構大事だと。
に:確かにそうですね。ボカロ曲もいろいろなジャンルがあるので、カッコいいのが好きなのか、かわいいのが好きなのかで、キュレーションが違ってもいいかなって気がします。例えば、ボカロp出身アーティストをビレッジバンガードがプッシュしていたりしますが、そのお店のように、ざっくりとした「好きなジャンル」でキュレーターが違うのがいいのかなと思います。
同時多発的にコトを起こす!
飛:まず、名前のある方々がそれをやることが凄く意味があるのかな、って思いますよね。僕は、また別のところで名前があるので、こっちは別の角度でやろうかな、って思って。そういうものを結集して、(同時多発的に)別の動きをしたら、色々なところに飛び火して面白いことが起きるんじゃないかな。
に:そうですね。40mPさんはトップランナーなので、このまま突っ走っていただいて。そういう方がいると、ボカロを知るきっかけになると思うんですよ。例えば「みんなのうた」に40mPさんの楽曲が取り上げられたのがいい例で。そうやって、ボカロの曲に興味を持つ「きっかけ」を作って頂いて。僕はもっとユーザーに近いところでアマチュアのイベントをやったりとか。そういうことで活動出来たりするといいな、と思っています。
せ:飛澤さんが以前仰っていたことで、非常に印象的だったのは、とにかく「仕掛けようよ」と。何か動いてみなきゃ始まらないし、動けば何かが返ってくるから、っていうのがありました。そうしたみんなの動きが、ぐるっと一回りして大きなうねりになるといいなぁ、と思ったりしております。
飛:僕はもう、MIXの技とかって、隠しだてすることなんにもないんで。とにかく、今自分が持ってるノウハウはセミナーとか音楽専門誌とかで伝承していきたいと思ってますし。
せ:でもそれが「文化」ですよね。そうやって伝わっていくことが「文化」だと思うので。
飛:DTMの裾野が広がって、色んな人が自分の部屋の中でやりはじめると、他人の仕事を見る機会がない。そこで「何を頼りにするか?」って言ったら、webの講座とか、そういうのがとても重要になっていくと思ってやり始めた。それからもっと広がって「文化」になり、音の質の底上げとかできたらいいよねぇ。みんながそうやってスキルが上がっていったら、ぜったい音も良くなって行くはずだし。
今後の活動予定・抱負
せ:そろそろお時間になってしまったので、最後に今後の活動予定についてお二方にお話しを聞いて、いちど〆としたいのですが・・・まずは40mPから。
40:とりたてて「こういうことをやっていく」って言うのはあまり決めてなくて、基本的にはボーカロイドで曲を作ることを中心にして色々やって行きたいんですけれど・・・創作のスタイルと、特にエンジニアリングに関しては、できる人にお願いするってこともやっていきつつ、自分のスキルも上げていきたい。最終的には、やっぱり自分でTD、マスタリングまで、「やれます」ってちゃんと胸を張って言えるスキルを身につけたいと思っています。だから、「勉強して行きたいな」ってところはかわらないですね。
せ:ありがとうございます。飛澤さんとしてでも、寂恋としてでもいいんですが?
飛:寂恋的にはですね、ヒマさえあったら曲を作ってアップしたいですね。
(一同笑)
飛:なかなかヒマもないので・・・曲を作ったりするのはとても好きなんですけれど。
40:創作はここでやられてるんですか?
飛:そう、全部ここで。ベース弾いて、ギター弾いて・・・僕はエンジニアになる前は、もともとバンドから入っているので。録音業界に入ってからは忙しくて何もできなくなっちゃったけど、自分は絶対フリーになって新人プロデュースとか、楽曲を自分で書くって言うふうに目標を持っていたのね。そこにちょうど初音ミクが出てきた訳。だから僕の中では、ボーカロイドどうしたいとかじゃなくて、自分の音楽人生の中で「待ってたものが来た!」って言う感じだったの。ボカロ曲はここまでに3曲書いて、特に2曲目はミクミクダンスってあるでしょ?頭の中に映像があったので、どうしてもあれで表現したくてね。ソフトをインストールして三週間スタジオにこもって自分でMMD動画作ったの。3曲目を3月の半ばに出して在庫がなくなってしまったんで、次はご縁もあるし、結月ゆかりで作ってみようかと。
に:ありがとうございます。
東京オリンピック・初音ミクの夢
飛:「寂恋」としては、今後も楽曲制作を続けて行きたいなぁ、と思ってますし、エンジニア的には、今回みたいな企画を通して、もっともっと、大勢の人に会いながら、さっきはじめの方にも言いましたけれども、若者の中での「音楽文化」として、もっともっと“遊べる音楽”に発展させたいな、って言うのが、自分の中での一番の目標ですね。「夢」じゃなくて目標。それをやって行きたいです。もっと言えば、6年後の東京オリンピック(の開会式)の時には、初音ミクが踊っていると言う絵を・・・
(全員、異口同音に)可能性ありますよね。
飛:ありますね。そこに行くまでに「文化としてのボーカロイド」っていうのを、今よりちゃんと確立させたい。東京オリンピックを目指して活動をして行きたいな、そう思ってます。
せ:ありがとうございます。これからも、この企画を何らかのかたちで続けていきたいなと、思っておりますので、40mPもにいとPも、ご縁がありましたら、ぜひまたご協力いただければと思います、本日は皆様お忙しい中、まことにありがとうございました。
40:ありがとうございました。
この対談から生まれた企画が「サウンドデザイナー」誌の連載『飛澤正人直伝 “魔法のMIXテクニック”』になりました!毎月1組のアーティストを招いて、提供いただいた楽曲を飛澤がブラッシュアップし、その内容をリポートしていくという企画。
2014年8月9日発売のサウンドデザイナー9月号では、40mPの「左右シンパシー」を、
10月9日発売11月号では、にいとPの楽曲「風の歌、月の道」を題材に、飛澤流MIXを解説しています。
※ サウンドデザイナーHPでは元の「オリジナル MIX」と「飛澤 MIX」の聴き比べができます。
対談日時 2014年3月28日
Flash Link Studio にて
撮影:小澤克之